今から語るのはSMの世界に嵌り、堕落した一人の女の話である。その女はSMの魅力に取り憑かれ、借金をし、肩代わりに自らの貞操を差し出した。女の名は、山岸香澄。30歳の主婦である。子供は、今年から幼稚園に通い始めた男の子がひとり。彼女の人生はまさのその平凡そのものであった。平凡な学歴、平凡な出会い、平凡な結婚、平凡な出産・・・それまで意識はしていなかったが、息子の幼稚園入園をきっかけに自らの人生の凡庸さに気付かされる。今まで育児に当ててきた時間をどう使っていいか分からない。まだ女盛りの30歳にもかかわらず、亭主の目はすでに子どもに向けられている。「私はもう、女じゃなくて母親なんだ・・・」