沢田いずみは思い悩んでいた。ピアノの先生から受ける猥褻な行為を受け容れてしまっている自分を。「こんな事を続けていてはいけない・・・わかっているのにどうしてやめられないの・・・？」やがて、そんな風に思い悩む時間が彼女にある事実を気付かせた。問題の先生の声と彼女の父親の声は似ているのだ。その事と猥褻行為から逃れようとしない自分の気持ちに、何の繋がりがあるのかは分からない。にも関わらず、その事に気が付いた彼女は平静ではいられなかった。気がつけば動悸を起こし、手にはじっとりと汗を握っている。今自分の身に何が起きているのか分からない。だが動揺している事は間違いない。その理由を心の内に探すのだが見つからない。思考をめぐらせ想い悩む内、彼女はひとつの仮説に行き着いた。“先生にお父さんを重ねて興奮していた…？”それはあまりに飛躍した仮説のようでいて、不思議と彼女の腑に落ちた。